せっかくの新築、夢に描いて時間とエネルギーを掛けて実現した我が家が欠陥住宅だとしたら、その悔しさや腹立たしさは、想像を絶するものだと思います。
では、欠陥住宅とは、どのようなものを言うのでしょうか。また、その判断基準は、どうでしょうか。
欠陥住宅となる原因や事例、そして欠陥住宅とさせないためには、どのように注意しなければならないのか、チェックしてみましょう。
欠陥住宅の事例が後を絶たないのはなぜ?
現在の新築住宅では、建築基準法や住宅瑕疵担保責任保険による検査が必ずあります。また、長期優良住宅や住宅性能表示制度を利用している場合の検査もあり、住宅の基本性能に関する欠陥は大幅に減ってきていると思います。
ですが、それでも欠陥住宅が後を絶たないのは何故でしょうか。代表的なものをピックアップしてみます。
厳格な工事の管理体制が整っていない
上に挙げた検査には、基礎配筋時、中間検査、完了検査があり、各時点での目視検査となりますが、全ての施工箇所を確認することはできないのも事実です。
これをカバーするのが、ハウスメーカーの管理体制やシステム、そして、現場管理者の経験・技量になります。ここで、注意しなければならないのが現場管理者の現場にいる時間です。
よく常駐と思われがちですが、現実には、ひとつの現場に一日中居るわけではなく、一人の現場管理者が複数現場を担当し、巡回管理しているのが実情です。場合によっては、数日に一度の現場管理と言うのもあります。
数日に一度と言うのは、現場を管理しているとは言えず、少なくとも午前・午後に一度は現場を訪れ、進行状況や施工状況を見て、適切な指導・管理をしてもらいたいものです。
ハウスメーカーによっては、定期的に、中には毎日、現場管理者から施主への工事報告を義務付けているところもあります。このような、ハウスメーカーには一定の安心感があると思います。
コスト限界のギリギリの契約
相見積りで競合させた挙げ句、契約直前に値切って契約した場合、見た目は変わらなくても使用されている材料の品質が落ちている可能性があります。
本来、相見積りで選定した見積り額を再度値切るのはルール違反なのですが、契約が欲しい業者や営業マンでは渋々でも認めてしまう場合があります。
しかし、企業も赤字になるのは避けますから、見えないところや目立たないところでコストカットし、何とか利益を確保しようとします。さらにコストカットが下請けの職人に向けられれば、手抜き工事に繋がることもあります。
ですから、無理な根切り交渉は避けるべきで、業者自らが大幅なサービスを申し出て、契約を勧めるような業者は避けるべきでしょう。
【3選】間取り|欠陥住宅の事例を紹介!
間取りのレイアウトそのものが欠陥になることは稀で、完成するまでそれに気づかなかったユーザーにも責任の一端はあると思います。
しかし、希望した部屋数や広さ、そして外観ばかりに気が向き、いざ完成した家で生活してみると、不便あるいは不愉快な思いで欠陥住宅と感じてしまうものも意外とあります。代表的なものを挙げてみましょう。
トイレ内が丸見え
これは意外と多く、最悪なのは、玄関ホールにトイレが面しており、トイレのドアを開けた時にトイレ内部まで見えてしまうものがあります。
家族だけなら、まだ我慢できるかもしれませんが、訪問客と玄関で立ち話することもありますから、その間、他の家族は、入りづらく出にくいトイレとなります。
なお、間取りとは直接関係しませんが、トイレのドアにも注意が必要です。
現在のトイレドアは、中で人が倒れた場合に、外から救助できるように外開きが主流となっていますが、このドアが階段の登り口あるいは降り口に面していると、不用意にドアを開けた時に階段を利用している人が大怪我をすることがあります。これも設計上の欠陥でしょう。
隣家の窓と重なっている
これも、比較的多いパターンで、せっかくの窓も開け放すことができず、やむを得ず開かずの窓となってしまうものがあります。特に、隣棟間の距離が小さい場合には致命的です。
例えば隣り合う家同士で、居室と脱衣・洗面所、あるいは浴室と向かい合う位置に窓がある場合、双方で遠慮しあい、開かずの窓となってしまいます。
また、キッチン換気扇の排気口が隣家の窓に向いている場合などもトラブルの元になる危険性が高いものです。
いずれにしても、後から建てた方が気遣う部分ですから、注意が必要です。経験豊富な設計担当者なら、事前の近隣調査で気づく点でしょう。
収納がない
収納スペースが全くない、ということはないでしょうが、少なさすぎると言うのはよくあります。
特に、1階のリビング・ダイニング回りにまったく収納スペースがなく、掃除機や古新聞・古雑誌、救急医療箱、文具小物など、日常生活に必要なものを何処に収納するのだろうか、と思うものがあります。
決して、居室スペースを大きく犠牲にしてまで作る必要はありませんが、最低限のものは必要でしょう。
その必要なスペースは、実際に家事作業や家族生活の経験がないと、なかなか適正な大きさや何処に必要なのかがイメージできません。
これらは、経験の浅い若い設計担当者に多いミスで、結婚を機に新築する若いカップルも気づきにくく、見落としやすい部分です。
出来上がった図面を元に、生活のシミュレーションしてみることを勧めます。
【施工・設計編】|欠陥住宅の事例を紹介!
雨漏り
設計上の雨漏りで多いのは、外観デザインにこだわるあまり、防水施工を難しくしている場合です。
一般的に、特別なデザインとする場合には、それに合った施工方法を図面に指示しますが、住宅規模でそこまで配慮する設計者は少なく、平面図・立面図だけで済ませるのが大半でしょう。
理想的には、平面形状は四角で屋根形状もシンプルなものが、一番雨漏りしにくい形状になりますが、現実にはマッチ箱のような家だけではありません。
ですが、できるだけ凹凸のないシンプルな形状を意識しておくことは必要でしょう。
雨漏りの要因には上に挙げた設計上のこともありますが、多くは施工上のミスで起こるケースです。
例えば、急勾配屋根の雨樋の位置や形状が不適切、あるいは屋根の山谷が複雑になっている時など、確実な防水施工を行わないと、大雨の日などに雨漏りしてしまいます。
ですから、ここでも屋根形状をシンプルにするのが雨漏り防止の最良の方法だと思います。
コンセント類の位置
テレビや冷蔵庫などのコンセント位置は、比較的注意して配置しますが、他の一般的な空きコンセント類は家具などのレイアウトをあまり考慮せず配置されている場合があります。
この場合、ソファーなどの家具の後ろにコンセントが隠れてしまうこともあり、折角の新築なのに、スタンドライトやオーディオ機器などを延長コードで繋がなければならないことになってしまいます。
なお、ハウスメーカーによっては、テレビコンセントや電源コンセント、そして照明スイッチの位置を図面に示しておらず、電気職人に任せきりとしている場合があります。
その場合、設計担当者あるいは現場管理者にコンセントやスイッチなどの配置位置を示してもらう、そして、図面上で電気機器や家具類をレイアウトすると共に、生活動線も含めてシミュレーションしてみることが必要でしょう。
基礎の養生期間と強度
基礎コンクリートを打って、型枠を解体するまでの期間は、標準的な気温が20℃以上の時には4日前後で、上部躯体を載せるまでにはさらに3日ほど、合わせて1週間ほどの養生期間は欲しいものです。
ですが、工期がない、あるいは業者の都合で、十分な養生期間を設けず上部躯体工事へと進める業者がいることも事実です。
特に、寒い時期に十分な養生期間を設けず上部躯体を載せた場合、基礎と土台を留め付けるアンカーが動く、ひどい時にはクルクル回るような状態になることもあります。
これなどは、建替えを要求しても良いほどの欠陥住宅です。
基礎の不同沈下
造成地や地震などで稀に基礎の不同沈下が起こることがあります。地震による場合は、明らかな施工上の欠陥とは言えませんが、そうでない場合は初期の地耐力調査が十分でなかった可能性があります。
なお、地耐力調査に基づいて適切な基礎とした場合に不同沈下が起きた場合は、調査会社による保証が一般的です。
床のキシミ
このクレームは接着剤の改良で随分減りましたが、今でも比較的多く耳にします。原因は、下地材や仕上材などの木材間の擦れ合う音です。
フロア材や下地材の留め付け方による場合もありますが、木材の乾燥・吸湿による場合もあり、次第に消えることもあります。
いずれにしても、欠陥と断定できるものではなく、施工業者も対応が難しいもののようです。反面、床のキシミにすばやく対応してくれる業者は、信頼できると思います。
ユニットバス回りの断熱材
これは、ユニットバスが外壁に接している部分に断熱材が入っていない、あるいは十分ではない、と言う断熱材施工の欠陥で稀にみられます。
これは、工事手順のミスで、外壁断熱材を入れる前にユニットバスの設置をしてしまった場合に起こります。
ユニットバスを設置してしまうと、外壁側との隙間がなくなり、後で断熱材を入れることが難しく、十分に施工することができなくなるのです。これは、工事管理者のミスですね。
床下のゴミ
これは、昔からよく聞く話で、床の点検口から覗いたら、ゴミや残材などが散乱していた、中には水が溜まっていた、と言うのもあります。
直接的に家の欠陥にはなりませんが、このような現場管理姿勢では、他の部分での信頼性も欠けますので、現場訪問時には、きれいに整理整頓されているのかどうか、チェックしておきましょう。いつも、汚い乱雑な現場は、要注意です。
欠陥住宅を作らせないためにできることって?
第三者の立場にある団体に工事の様子をチェックしてもらう
住宅が建築基準法に適合して建てられているか、設計図通りに建てられているかの工事チェックをする第三者団体には、建築主事のいる管轄の行政、指定確認検査機構、指定住宅性能評価機関があります。
ここで、指定確認検査機構や指定住宅性能評価機関は国から指定されたもので、両方の機能を兼ねている場合が多くあります。
また、現在の新築住宅に義務付けられている住宅瑕疵担保責任保険の現場検査もここで行われています。
単に建築建築確認申請だけによる住宅工事の場合は、標準的な規模では、中間検査(躯体工事完了時)と完了検査が行われます。
住宅性能表示制度や長期優良住宅を利用している場合は、上記の検査に加えて、基礎配筋時の検査があります。
基礎の配筋検査では、使用されている鉄筋の種別とともに、配筋状態を確認します。中間検査では、柱や梁などの部材寸法や取り付け方、筋交いなどの耐力壁の配置と取り付け方などをチェックします。
最後の完了検査では、建物が建築確認申請書に添付されている平面図や立面図通りになっているか、そして仕上材に防火等の問題がないか、などのチェックを行い、問題がなければ検査済書が交付されます。
この検査済書は、引渡し時には必ず貰うようにし、大事に保管しておきましょう。
家を建ててもらう建設業者を慎重に選ぶ
新築住宅の設計を設計事務所に依頼し、設計者の協力で請負建築業者を選ぶ注文住宅で無い限り、建築業者を自由に選ぶことは無理だと思います。
ハウスメーカーの場合には、協力業者の中から地域や建設時期に対応できる業者が割り当てられるのが実情でしょう。
これが、同じハウスメーカーの口コミでも、丁寧にしてもらった、あるいは失敗だった、などと評価が分かれる理由です。
しかし、メーカーの協力業者になるには、一定の信頼や実績、そして技術力などが必要ですから、基本的な施工技術には大きな差はないはずです。
また、メーカー特有の工法などの場合には、相応の研修もあります。それでも、不注意などから起こるミスを見つけ修正させるのが現場管理者の役目です。
ですから、見積り~契約~着工までの間に紹介される現場管理者としっかりコミニュケーションを図っておくことが重要になります。
そして、こまめに工事報告をしてもらと共に、幾度かは現場を訪れ、進行具合などの様子を見に行くことも大事なことです。
ホームインスペクターに住宅に欠陥がないか確認してもらう
比較的良好な中古住宅を経年評価ではなく、実際に住宅を各種検査して残存価値を評価する、そして中古市場の活性化を目的として、2016年に宅建業法が改正され、中古住宅の取引時にホームインスペクション(住宅診断)の結果説明が義務付けられました。
そして、この検査を行うのがホームインスペクターになります。
ですから、ホームインスペクターに依頼するのは、請負契約による注文住宅ではなく、完成した住宅(新築・中古共)で、建売住宅の欠陥の有無や程度を知りたい時などでしょう。
また、ホームインスペクターの資格は、民間団体の認定によるもので、1級建築士や2級建築士などのような公的なものではありません。
もちろん、認定には一定の専門試験があり、検査に特化した内容になっていますので、一定の安心感はあると思います。
まとめ
大地震のたびに改正される建築基準法、そして住宅瑕疵担保責任保険が義務化され、相応の検査が実施されている現在の新築住宅では、根本的な欠陥住宅は稀です。
多くは、仕上げや使い勝手の悪さなどから、業者やハウスメーカーとのトラブルで、欠陥住宅とイメージしてしまうものがほとんどでしょう。
一方、これらの不満やトラブルは、せっかくの新築住宅の喜びを台無しにしてしまうのも事実ですから、ユーザー側でも見積り時から完成まで気を抜かず、良い意味でしっかり見張る姿勢も必要だと思います。
なお、明らかな欠陥は勿論ですが、何らかの疑問や不具合が見つかった時には、タイムリーに時間をおかず、設計担当者や現場管理者、あるいは請負業者や販売会社に伝えることが、我が家を欠陥住宅にしない最善の方法だと思います。
そして、それでも解決しなかった時には、住宅紛争処理支援センターなどの第三者に相談することを勧めます。