家の購入を考えるのは何も若い人だけに限った話ではありません。
定年を迎えた時こそ落ち着いて家を探すことができる、本当の静かな暮らしができる、そう考える人も少なくはありません。
しかし中には「定年後の家探しはキケン!」と声を挙げる人がいるのも事実。
危険なら危険で良い家を探す方法もあるのではないか、今回は「定年後の家探し」という部分に焦点を当てて解説しようと思います。
【定年後】どれくらいの人が家を建てる?
家を建てる理由、それを見る前にまずは「どのくらいの人が家を建てるのか」その数字をご覧ください。
それを踏まえて、定年後に家を建てるその理由をご紹介いたします。
【定年後】どれくらいの人が家を建てる
「定年後、その時自身の住んでいる家をどうするのか」そもそもこういった疑問を持つ人は多くいるようで、実際に家の購入まではいかなくとも何かしらの行動を起こすという人はかなりの数実在します。
その中で「家を建て替える」「一戸建てを購入する」というのは定年した人の約5%に当てはまります。
定年した方が100人いれば5人ほどは実際に新しく家を購入しているのです。
「家の購入」だけで約5%、これが「リフォーム」を含むとなんと20%近くにも膨れ上がります。
つまり、定年したからこそ新しい生活を始めたい、という人が一定数以上いるということ。
危険とは言われている定年後の家の購入ですが、危険な反面、しっかりと需要があることが分かります。
定年後に家を建てる理由は?
ではここで「定年後に家を建てる理由」についてご紹介。
何故早い内ではなく、わざわざ「定年後」を選択するのか、そこにはそれ相応の理由があるのです。
大きな家は必要無くなる
子供がいる家庭なら既に家を出て使っていない部屋もある、なんて方もいるのではないでしょうか。
実際に子供部屋をそのまま子供部屋として使っている期間はおよそ5年ほどと言われており、家族のために大きく広い家を購入してもほとんど使っていないことになるのです。
そうした家で定年後も暮せば掃除や維持が大変になり、もっと暮らしやすい小さな家を選ぶ人が増えているのです。
今の場所に住む理由が無くなる
定年後ということは毎日を自由に過ごせるということ。
毎朝起きて通わなければいけないところもなく、もはや同じ場所に暮らす必要も無くなるのです。
定年後の新しい生活を新しい場所で過ごしたい、という人もいるようで場所に関しても1つの理由として挙がっています。
リフォームするより安くなる場合も
新築を購入するだけでなく、リフォームなんかも定年後に行われることが多くなっています。
しかしリフォームは場合によっては新築で一戸建てを購入するよりも高くつくことがあり、それならばリフォームよりも安く暮らしやすい家を購入しようという人も出てきているのです。
老後の身体を心配して
定年後というのは年齢にして60代から70代にもなります。
これまで暮らしていた家では身体の関係で不十分なとろこも多々出てきてしまいます。
そこで暮らしやすいバリアフリーに焦点を当てた住宅を建てる、そうした配慮が必要になってきます。
定年後に家を建てる!メリットは?
わざわざ定年後に家を建てる「理由」について紹介しましたが、もっと詳細な「メリット」についてもご紹介しておきます。
もしも今まさに定年後の家の購入を考えながら多少なりとも疑問をお持ちならこの「メリット」をよく知っておくとさらに夢は広がることでしょう。
メリット1【好きな場所で暮らせる】
仕事のため、家族のため、それまで何かと制限に縛られて暮らしてきたという方も多いのではないでしょうか。
定年が過ぎればそういった制限もなく、好きな場所で好きなように生活を送ることができます。
実際に挙げられている声の中には「生まれ育った故郷に帰る」「孫の近くで暮らす」といったものもあり、ある程度の自由な暮らしが約束されていると言っても過言ではありません。
メリット2【バリアフリーの導入】
60代、70代にもなると階段や少しの段差も辛くなりがち。小さな段差でさえ大きなケガに繋がる懸念もありほどです。
そういったものから身を守るためにもバリアフリーを導入した家を建てたいところ。
今の身体に合わせた住宅を建てることができるというメリットになります。
メリット3【その瞬間に適した家が購入できる】
夫婦2人の家庭に2階建ての大きな家はその存在自体持て余してしまいます。
掃除や片付けの手間、動き辛い段差などその瞬間の家庭には不必要な要素も多くあるでしょう。
夫婦2人なら小さな家でも十分、動きやすいように平屋住宅を建てる方、バリアフリーを考える方、その瞬間に暮している方に適した家を建てられます。
定年後に家を建てる!デメリットは?
既に「危険」という言葉が出ているように、定年後の家の購入にはそれ相応のデメリットが存在しています。
メリットを知っておくことも大切ですが、場合によってはデメリットこそ重要なポイントとなることもあります。
住宅ローンが組みにくい
定年後に家を建てる際、デメリットとして挙がるものの多くがお金に関するもの。
その1つが住宅ローンに関するもので、住宅ローンの審査では「健康状態」といったことも加味されます。
他にも「完済時年齢」「年収」といった項目があり、そもそもローンを組むのが難しくなるという問題が起きてしまうのです。
老後の資金に不安が
そもそも定年後に改めて家を建てる人というのは、ある程度の資金繰りが可能である人。
十分な貯蓄がある、もしくは定年後にも毎月払っていけるだけの収入があるかになります。
そのため貯蓄もほとんどなく、収入があるわけでもない方が定年後に家を購入すると後々資金面で大変な思いをすることになります。
家を建てるということはその後の暮らしを考えること、その先を見据えることが重要になります。
特定空家の危険
家を建てた後の事を考えなければいけない、それは資金面ともう1つ身体の面でも同様です。
ある程度年を重ねると「認知症」などのリスクも高まり、最悪その家で暮らすこともできなくなります。
施設へと入ることになると、せっかく建てた家も暮らす人がいなくなり「特定空家」と呼ばれるその自治体からの認定を受けることにも繋がってしまいます。
定年後にローンは組めるの?注意点など紹介
上記でデメリットとしても挙げていますが、そもそも定年後、たとえ年金暮らしである程度の収入があったとしても住宅ローンを組むことは可能なのか。
こういった疑問は多く挙がっており、実際に定年した方が最も抱きやすい疑問の1つにもなっています。
率直に言えば定年した方でも住宅ローンを組むのは『可能』。
ただしやはり相応の制限などが付いてしまうので、定年後の方と20代30代の方では内容は大きく異なるでしょう。
審査は通る、むしろ安心できるポイントもある
住宅ローンはまず審査を行う必要があり、健康面や年齢によりハードルは上がってしまうのが現実。
しかし反対に『年金』という大きな存在があり、これは言わば「安定した収入」になるのです。
基本的に年金は「人生において最も確実な収入」であり、リストラや倒産の危険性のある会社勤めの方よりもよっぽど確実。
年金はほとんどの人が受け取ることができますが、ここにさらに別の副収入があれば金銭面では言うことはありません。
安心できないポイントもある
年金がある限り安心できるのはもちろんですが、20代30代とは違った定年後の方だからこその注意点もあることを知っておきましょう。
1つ目は上で紹介している年金にまつわるもの。
年金は安定して入るという点ではメリットですが、会社勤めしていた人にとっては収入としては大きく額が下がってしまいます。
収入として少し物足りないこともあり、それによって借入可能額も低くなってしまうこともあるのです。
もう1つが住宅ローンを組む年数。フラット35という制度があるのをご存知の方もいるかと思いますが、定年後に35年の住宅ローンを組むのは現状ほぼ不可能。
というのも一般的な住宅ローンの条件の1つとして、
”80歳までに完済”
というものがあるのです。人によっては15年ほどのローンしか組めないこともあり、この80歳という年齢を考えた上でローンを組むことが必須となります。
すなわちここでもまた借入可能額に大きな影響が出てきてしまうということなのです。
リフォームやリノベーションではだめ?
家を購入する、という部分にこだわって話を進める人も多いでしょう。
しかし「家の購入」ではなく、現状の家を残し「リフォーム」「リノベーション」するのでは駄目なのか、そう考える人もいるでしょう。
実際家を新たに建てる人よりも、引っ越し等の面倒も無い「リフォーム」「リノベーション」を行う人も少なからずいます。
しかしこれらには家を建てるのとは違ったデメリットが存在することも忘れてはいけません。
リフォームやリノベーションのデメリット
新しく家を建てるのではなく現存する家を改築するリフォームやリノベーション。
これが素直におすすめできるものではない、デメリットとして挙がるポイントをいくつかご紹介いたします。
大幅なリフォーム・リノベーションは莫大な費用がかかる場合もある
もともとあった大きな家を、定年後の環境に合わせて小さく改築。
通称「減築」とも言われているこの方法、どこまで変化をもたらすことができるのかと言うと二階建ての住宅を平屋にすることもできるのです。
用途に合わせてバリアフリーを設ければ十分2人で暮らしていく家になるのですが、ここまで大掛かりな減築を行えば当然ながら費用も大きくなってしまいます。
1000万円、1500万円にも膨れ上がることは少なくなく、そうなればむしろ新しい家を建てるのと変わりない、場合によってはそちらの方が安くなることだってあるのです。
将来的に元に戻すことができないことも
家族が家を出て夫婦2人になった家庭、その環境に合わせて小さな家へとリフォームするとします。
数年後にやはり家族が戻ってくるという話が出た時、以前の大きな家に戻すことは簡単ではないのです。
家を建てるにはその当時の建築基準法が適用されます。かつての家と改築を行った現在の家では違いが生じ、建ぺい率という家を建てる際の基準も異なる場合があるのです。
家を元に戻すことが厳しくなることもあるので、もしものことを家族同士で話し合っておく必要があるでしょう。
いずれにしても一度リフォーム・リノベーションを行うと「取り返しがつかない」ことになるということを頭に入れておきましょう。
ごく小さなリフォームならまだしも、大規模なリフォーム・リノベーションを行うのならむしろ手頃な新築を買う方が安くなることも考えられます。
【定年後】中古マンションの購入じゃだめ?
住む場所、という広い意味では一戸建ての他にマンション購入という手もあります。
しかしマンション、その中でも中古マンションともなるとやはりデメリットは存在。
注意しなければいけないポイントとして中古マンションのデメリットについていくつか挙げてみようと思います。
中古マンション購入のデメリット
一般的に挙げられる中古マンション購入のデメリット、もしもこうしたタイプの住宅を考えているのならよく確認して理解しておくことが必要です。
そして気になるデメリットにはお金に関する事はもちろん、マンションという住宅の構造についてもいくつか挙がっているようです。
バリアフリーの設置が難しい
新たにリフォーム・リノベーションが可能な物件ならいいのですが、全ての中古マンションにバリアフリーが導入されているとは限りません。
室内に階段が無い、というのは大きなメリットかもしれませんが所々に大きな段差がある場合も多いので暮らし際には注意が必要です。
部屋までの移動が大変
マンションの1階に住む、エレベーターを利用する、これでほとんどの移動に関するデメリットは回避できますがマンションは時折エレベーターのメンテナンスを行います。
そうした場合は階段を利用することになり、住んでいる場所が上であればあるほど大変です。
マンションの上下の移動は高齢の方には厳しく、一般の中古マンションはそういった意味では非常に危険です。
ローンの返済期間が短くなる
住宅ローンは申し込む時の年齢によりその後の返済期間に違いが生じます。
年齢の上昇に応じて短くなり、同時に借入可能額も少なくなってしまうのです。
返済期間の短さに対応するため、予め自己資金や頭金を用意するなど何かしらの対策が必要になるでしょう。
いくつかのデメリットを紹介してきましたが、必ずしも中古マンションがダメだと言うわけではありません。
現在では高齢者のために建てられるマンションも用意されるなど、国や自治体による対応策も出されています。
どうしてもマンションがいい、という方はこうしたものを利用するのが得策になるのではないでしょうか。
定年後に家を建てる!住宅選びのポイントは?
いくつもの要素を踏まえて、ここで定年後の良い家の建て方とも言えるポイントをいくつかご紹介いたします。
これまでの人生とはまた違う、新しい人生をスタートさせるという意味でも大事なポイント。
制限があるからこそ上手なやり方が鍵を握ります。紹介するポイントを参考に是非良い家を建ててみてください。
定年に向けての資金計画
年齢によって返済期間に違いが生じるなど、何かと資金繰りが難しいのが定年後の家の購入。
もしもまだ定年まで時間があり、こうしたプランを考えているのなら早くから資金計画を立てておくことをおすすめします。
返済期間が短くはなりますが、頭金や十分な貯蓄があれば返済自体は難しいことではありません。
計画的に将来の家について考えることが大きなポイントになるでしょう。
暮らしやすいバリアフリーの導入
新しく家を建てるなら取り入れておきたいのがバリアフリー設備。
段差を少なくする、スロープを付ける、といった設備はもちろん住宅タイプをいっそ二階建てから平屋にしてしまうのもポイントです。
動きやすいだけではなく、片付けや掃除もしやすくなるので夫婦2人だけという家庭におすすめです。
建物本体だけでなく暮らす場所にも配慮を
家の中、構造、外観といった基本的な家の設備はもちろんですが、暮らすことになる場所にも気を付けておきたいところです。
もしも定期的に通っている病院があるのならその近くに、子供や孫のいる地域に、なるべく坂の少ない土地に、など配慮できるポイントはたくさんあります。
【定年後】家を建てる!おすすめ間取り5選
定年後にどんな家に住むのがいいのか、言葉よりも分かりやすい間取りを見てさらによく理解しておきましょう。
定年後にピッタリの間取りを全部で5つご紹介します、いずれも定年後の方にこそ向いている家ばかりです。
定年後にピッタリの間取り、その1【自然を感じる平屋の家】
夫婦2人暮らしにおすすめの間取り。住宅の半分をリビングダイニングが占め、寝室には和室を利用する古風な雰囲気の木の住宅。
必要最低限の間取りとなっているので大きな移動を行う必要もなく各スペースを利用できます。
出典:栗田木の住まい
定年後にピッタリの間取り、その2【中央にリビングを置いた動きやすい平屋の家】
シンプルな間取りの中にも収納や使いやすいキッチンなど、生活の質を向上させるアイテムをしっかりと設置。
洋室が2つ設置されているので、1人1人で使うことも来客用とすることも可能です。
出典:ジャストホーム
定年後にピッタリの間取り、その3【2人で暮らす空間をより広くした平屋の家】
夫婦2人の時間をより快適に楽しむために、共にいる時間の多いリビングを広く確保している間取りです。
その分寝室となる和室はコンパクトになっていますが、押し入れを広くとるなどこだわりも見せています。
なるべく煩わしい移動を無くすよう配慮されているので、普段の生活もずいぶんと楽になるのではないでしょうか。
出典:山井建設
定年後にピッタリの間取り、その4【段差を少なくした二世帯住宅の家】
家族と暮らすことを考えられて建てられた二世帯住宅の間取り。
寝室は家の奥に位置していますが、中央に家族の集まるスペースを設置しているのでそこを中心に各方面へと移動しやすくなっています。
この住宅では段差を少なくするなど移動への配慮も行っており、バリアフリーも完備している間取りとなっています。
出典:セキスイハイム
定年後にピッタリの間取り、その5【どこにいても自然を感じる平屋の家】
中央にリビング、そこからダイニング、寝室、浴室など生活の中心となるリビングから各所へと移動しやすくなっているのが特徴の間取り。
生活スペースである寝室、リビング、ダイニングは直接ウッドデッキへと繋がっているので外の空気が吸いたくなったら、光を浴びたくなったらすぐに出ることができるようになっています。
もちろん出る際のバリアフリーも忘れていません。
出典:セキスイハイム
まとめ
「家の購入は若い内に」そんな言葉も聞こえてくるぐらい、ある程度の年齢へ達した時点でもはや「危険」とも思われる家の購入。
しかし定年後、年金暮らしとなった方だからこそのメリットもあるほど実はただ危険ではないことが分かります。
とは言えデメリットやリスクがあるのも確か。良い面と悪い面を理解しながら、定年後の自分にピッタリの家を探してみてください。